勝敗グラフと有向閉路の存在性
勝敗グラフ
本記事における勝敗グラフを次のように定義する.勝敗グラフは有向グラフの一種である.
頂点集合,辺集合を持つ有向グラフを考える.
に対しを次のように定義する.
が次に示す条件を満たすとき,かつその場合に限り,は勝敗グラフである.
本記事の主張
次の命題は勝敗グラフが有向閉路を持つことの必要十分条件である.
証明
が有向閉路を持つことを,と表すことにする.
十分性の証明
を仮定する.
このとき,の定義から,には辺が存在する.この辺が長さの有向閉路をなすので,
必要性の証明
が真であると仮定する.
勝敗グラフの定義から,は長さおよび長さの有向閉路をもたない.よって,は長さ以上の有向閉路をもつ.
が長さの有向閉路をもつと仮定し,そのひとつをなす頂点を順にとおくと,には辺が存在するので,
よって,
したがって,が長さの有向閉路をもつとき,
について,が長さの有向閉路をもつと仮定し,そのひとつをなす頂点を順にとおく.このとき,には辺が存在する.
ここで,とに着目する.勝敗グラフとの定義から,またはのいずれかが成り立つ.
と仮定すると,には辺が存在する.よって,には辺が存在するので,には頂点からなる長さの閉路が存在する.
と仮定すると,には辺が存在する.よって,には辺が存在するので,には頂点からなる長さの閉路が存在する.
帰納的に,
必要性と十分性が示されたので,
以上のことから,次の命題は勝敗グラフが有向閉路を持つことの必要十分条件である.
逆に,次の命題は勝敗グラフが有向閉路を持たないことの必要十分条件である.